次世代のパート

今日の日本では、繰り返し強調しているように、そのための財源がない。 国も地方政府も莫大な借金を抱えて、思い切った歳出カットを迫られている状態である。
従って、補助金を提供して特殊法人にサービスを提供させるというやり方は,これからは不可能になっていく。 いまこそ需要創出型の構造改革を一方、成熟先進社会の日本では、中層階層の多くの人々はサービスを購入する購買力を持っている。
ところが、購入できる便利で多様なサービスがない。 なぜなら、多くのサービス分野が規制と保護で制約されており、民間の活力や創意工夫が生かせない形になっているからだ。
従って、こうした閉塞状態を打開するには、生活者が望むサービスを民間の事業者が提供できるようにすればよいだろう。 そのためには、民間の事業者がこれらの分野に自由に参入し、創意工夫を生かして、多様なサービスを潤沢に提供できるような条件を、制度的にも社会経済的にも整備することが必要だ。
ところが、民間への市場の開放は、実際にはそれほど容易ではない。 上述のように、これまで長年、そうしたサービスの提供を担ってきた公的部門や特殊法人などが、民間事業者との自由な競争を好まず、政治的にも社会的にも様々な抵抗をし、障害となる場合が多いからだ。

これらの障害を精査し、経済的、社会的に正当性のないものを排除していくのが規制改革である。 正当性のない障害が排除されれば、民間の事業者はそうした分野に参入でき、多様なきめ細かいサービスを提供できるようになる。
中層階層の多くの生活者は、高齢化社会の中でも、貯蓄をはじめそれなりの購買力は持っているから、彼らのウォンツ(願望などの潜在需要)に的37確に応えるサービスが提供されれば、それを買うだろう。 それが「需要創出型構造改革」である。
そうすれば、政府の財政難で補助金の財源が乏しくなっても、多くの人々には彼らが選択するサービスが提供される。 それらのサービス産業は、利益が出れば税金を払うから、むしろ財源は増える可能性がある。
多くの中層階層と富裕層が、民間サービスを利用すれば、政府の限られた財源は本当に困難に直面している困窮者のためにむしろ集中的に投入することができる。 これが本当の弱者にやさしい「明るい構造改草」なのである。
以下、上述したようないくつかの分野について、その実現のために、例えばどのようなことができるかを指摘してみよう。 高齢者ケアの分野について言うと、上述の「安心ハウス」のようなモデルが有益と考えられる。
これは基本的に補助金なしで民間の事業者が経営するケアサービスの仕組みで、普通の中層階層の生活者が年金程度の負担で入所でき、居住と必要に応じた介護サービスを受けられる。 可能であることを全国の自治体に周知徹底させ、できれば老人福祉法などの基本的な法律の中いまこそ需要創出型の構造改革を「安心ハウス」の規定を明記することである。
補助金に依存しないこうした事業が国に普及すると、高齢社会の不安は大きく解消され、同時に、そうした事業を行うサービス産業と雇用が発展することになる。 子育て支援については、民間事業者がこの分野に参入して生活者のウォンツに応える多様できめのかいサービスを提供できるようにするためには、児童福祉法はじめ関連諸法規を改正して、民間事業者が保育サービスの受給者から直接、保育料をもらえるようにするとともに、ユーザーに選択権を与えるパウチャ−制を導入して、サービス向上に競争原理を導入することだ。
各地で民間事業の申請が不当に排除されないように、自治体レベルでの情報公開と行政手続きの透明化、明確化を徹底することが必要である。 社会人教育は、高齢化と情報化が進む中で社会的、経済的な重要性がますます高まりつつあるが、文部科学省など行政当局の規制改革への柔軟な対応が、こうした活動を活発化させ成長させるためには何より必要である。
医療と健康づくり支援の分野では、情報の果たす役割が大きい。 生活者にとって、自分の医療・健康に関する情報を十分に入手でき、その意味が理解でき、理解に基づいて行動できることが基本である。
情報の開示は、カルテの電子化をはじめ医療情報化に向けた政府や医療界の努力によって進展しつつある。 その過程で、医療情報の院外蓄積や個人情報の保護と情報の開示の関係、ならびに医師や病院の客観的な評価など重要な課題を解決していく必要がある。
住宅は既存住宅の流通市場の整備と良質な住宅ストックの蓄積が基本である。 住宅の流通市場の整備のためには、性能評価の普及や売買実額の公表などむしろいくつかの規制強化が必要である。

良質の住宅ストックの蓄積のためにも二重ガラス、外断熱、配管の外付けなど、むしろ規制強化が必要だ。 規制は緩和すればよいという考えは既に過去の遺物であり、生命、安全、環境などの面で必要な規制はむしろ強化し、経済競争上の規制については極力撤廃するというのが「規制改革」だからである。
地域交通については、生活者のための自由で多様なサービスの創造と発展を促すためには、道路運送法の規定をポジティブリストからネガティブリストに変更した方がよい。 ポジティブリスト方式はやってよい事業のリストを法律に明記する方式で、それ以外の事業はできないことになる。
ネガティブリストは禁止すべき事業のリストを法律に書く方式で、それ以外の事業は原則的にやってよい。 ネガティブリスト方式の方が,新産業などが生まれやすい。
これ以外にも多くの分野で同様の問題がある。 日本はポジ方式が大勢だが、むしろネガ方式に変更して経済構造の転換を促進すべきである。
以上はわずかな例を摘記しただけだが、これからの多くの生活者サービスの分野では、社会的な需要が広く大きく高まりつつある一方で、政府の財源難はますます厳しくなるので、不当な既得権を排除しながら、規制改革によって、民間の事業者が自由にこれらの分野に参加して、競争を通じて生活者のウォンツに応える多様できめの細かいサービスを潤沢に提供できる社会にしていくことが、二一世紀の新しい「勝利の方程式」になることは明らかである。 サービス消費が新たな繁栄の好循環を生むいまこそ稲妥創出−Wの構造改革を生活者サービスの重要性を強調すると、サービス偏重ではないかとの批判をいただくことが少なくない。

さらに、「日本はものつくりが得意で、ものつくりこそ立国の基本だ」という意見を聞くことも多い。 確かに「ものつくり」は重要であり、日本の比較優位もものつくりにあったし、これからもその優位を維持していくことは大切である。
筆者は、ものつくりの重要性を理解し評価することについては人後に落ちないと自認している。 その上で、これからの経済戦略の基本としてあえてサービス産業の発展、とりわけ生活者サービスの充実を強調したいのである。
それは以下の理由による。 戦後日本の復興と発展は、「ものつくり」に注力した日本がアメリカなどへ工業製品を大量に輸出することで達成された面が大きい。
その意味では日本の国家戦略として「ものつくり」の重要性は大きく、その意義は少しも減つてはいない。 41一国の経済循環はものつくりだけでは成り立たない。
経済の投入・産出構造は、最終需要部門とそれを満たす中間生産部門によって構成されている。

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